陽だまりのホットケーキ(後)

日常そのいち。リニア視点。

 

 

「おなか・・・すいた・・・」

 

 時間はお昼過ぎ。太陽が少し傾きだす時間帯。お日様の誘惑に負けてティナちゃんとごろごろしてたんだけど。

こう・・・空腹は耐えがたいっさー。

一階にに降りる。目的はもちろんただひとつ。食糧確保。

そのためにはまず仲間を迎え入れなければ。というか即戦力。

どんなゲームも初手の仲間選びってのは大事だいじー。

 

「あーすーか、っと、およ」

 

 お目当ての人材は、窓辺で本を片手に惰眠を貪っているようで。

私の空腹の危機に居眠りとは流石よねー。

今に見てなさいよっと。

 

「おなかすいたぁ~あ~す~かぁ~」

 

 起きろ、おっきろー。私は食べ物をご所望さー。

いつもの額当てをしていないせいか、いつもより髪が下りてるせいか。

そんなんだからめめっちいさー。相変わらず整った顔しちゃって。うぬぬ。

そういえば、あたしも髪伸びてきたなぁ・・・。そろそろ整えてやろーかねー。

ママに似てだいぶくせっけなのが玉に傷なんだけど。

そしてそろそろ起きないかね。揺らす体力も結構いるのよおーきーてー。

 

「んぁ?あぁー……あと2時間…」

 

「日―が―くーれーるーでーしょー!!」

 

 二時間とは。まだ惰眠を貪る気なのかこのこのぅ。

ってちょっと、ちょっと待つさあすかさん?何で再び眠る体制に入ってるのさ。

あたしはおなかがすいたって言ってるでしょーに。とりあえず再起動させねば。

 

「あ~す~かぁ~」

 

 面倒くさい寝かせろとあからさまに顔で語りながらむっくり起きた。

髪が乱れてるのはあたしのおはようラッシュの賜物さね。疲れたよ。

 

「ったくさ、暇な時ぐらい寝かせてくれよ」

 

「何を三十代の疲れ切ったオッサンみたいなこといってるのさ」

 

「誰がオッサンか!」

 

 まあおっさんって言うよりは美少女って言ったほうがって脳内会議になりそうだったけど

流石にぺしぺしされそうなのでやめといた。むぅ、睨むな睨むな。

なんかもう、前髪整えながらさっとエプロン取るあたりもうなれてるよね。

 

「あたしはお寿司をご所望さー!」

 

 なんとなく思いついたものをリクエストしてみる。

 

「時間見ろ馬鹿。猫缶だしてやろうか」

 

 速攻で却下された。

アスカがライちゃんにおやつの旨を伝えながら食器類を用意。

お風呂でびったんびったん言ってるしすぐ来るでしょうさ。

にしてもお風呂を常に占拠ってちょっとうらやましいようなきも・・・あったかいし。

でもあたしのぼせるの早いのよねー。あっついのは結構苦手だし。

 

「で、なにつくるっさー?」

 

「あー・・・めんどくさいからホットケーキあたりでいいだろ」

 

「あ、私参加可能な奴」

 

「それでいいのかよ。そのうち女子(仮)とかなるぞ絶対」

 

 ほう。言ってくれるじゃないのさ。じゃーあれだ、アスカはあれだ

男子(仮)とかにして徹底的に女の子らしく仕上げてやるっさー。

今に見てなさいよ。

 

「ふっふっふ。台所を台無しにされたくなければ言うことを聞くっさ!」

 

「おのれ!台所を人質とは卑怯な!交換条件は何だ!言ってみろ!」

 

「いいだろう…まずはクリームを増し増し」

 

「太」

 

 待った。アスカ待った。それは禁句、絶対それ禁句だから。

 

「よかろう、台所が焼ける覚悟がおありらしいですな」

 

「ああ!お玉が!お玉の腰があらぬ方向に!」

 

 曲がれ曲がれーぃ。次はアスカ、あんたの番だぞこのやろーぅ。

というかね、ホットケーキならほら、単純だしね。私が何か手を加えたとして

ぎりぎり食べられるものにはなるんじゃないかなーぁ・・・せめてなって。

 

「フフ・・・今日の私はやる気っさアスカ!さぁ!焼いて見せようぞホットケーキ!」

 

「ティナ以下とはもう駄目なんじゃないっスかね」

 

 てなちゃん以下とかそんな言い方ないでしょーよ。てなちゃんに失礼だってそれ。(おい

あたし自身紅茶を料理だーって言い張ったりとかしてたけどさ。けどさ!いいじゃん紅茶!

アスカ飲まないんだよねー。おいしいのに。

 

 卵割ったり材料混ぜ混ぜー。ここら辺はいくら私でも余裕さねー。

入れて混ぜるだけだし。後はお砂糖だったはず。砂糖かー。

それなりの量入れれば甘くてふわふわに仕上がってくれないかなあ。

ケーキのスポンジとかみたいにさ。

とか思ってお砂糖の袋に手をかけたらアスカに速攻で止められた。

後頭部に目でもついてるのかを疑いたくなる速度で。

 

「むぅ。大体でできるっさ大体で。」

 

「お前なんでそれで毎回武器完成させられるんだよ怖いわ」

 

「削りだしとかだからねー、意外とこう・・・降りて来た的な感じで。」

 

「何それ凄ぇ。いやでも料理は分量守れ。そもそもお前に目分量利は不可能だ」

 

「言い切られた!ひどいっさアスカ!」

 

「何を今更」

 

 とはいえ確かにねー。料理はこう・・・あふれ出る想像力が駄目なほうに・・・・

武具作るときにそれがきてくれればもっといいんだけどなぁ。

あ、ライちゃんお風呂場からでてきた。

・・・いろいろあれだけどちょっと観察しとこう。

 

「あとはやくだけですー?」

 

「ふぇあ!?」

 

 らいちゃんのあててんのよ的アタック炸裂。いやうん。なんか駄目な気がする。

とりあえずしてやったぜハイタッチ。アスカの可愛いお声いただきましたー。

・・・星二つかな。

 

「いきなり抱き着くな!音もなく後ろに立つな!と言うかそれ以前に

 ・・・・・服きてから出て来いド阿呆!!」

 

 怒られた、いやまあね、さむそーだなーとか私も思ったけど。

アスカは色仕掛けに弱い(にっこり

出来るできないはまた別の話だけど。

 

「ついでに髪もかわかすさー!」

 

 らいちゃんつかんでお風呂場再入場。

あ、てなちゃんおきてきた。後は任せておきましょーかねー。

うむ、そしてライちゃん、その行動へは思うところがないわけではないのさ!

・・・確保。

 

「さーさーお客さんとりあえず髪をかーわーかーすーさー」

 

 らいちゃんのほっぺむにー。とりあえずもういっかいむにー。

 

「ひゃひするんでふかひーたん。ひんひょのほっへはひゃいへーでひないのへひゃへひゃらめれふよー」

 (なにするんですかりーたん。にんぎょのほっぺはさいせーできないのでたべちゃだめですよー)

 

「なにをしてるっさこのお魚さんめ!風邪引くでしょー、というかその格好は駄目っさー!!」

 

「あまりくっつくのは駄目なんでした。そんなりーたんはやきもちさんです?」

 

「むぐ・・・なにをおっしゃいますかー!ライちゃんのかみのけぼっさぼっさにしてやるっさ!」

 

「あ~れ~」

 

 むぅ、いつも流されるのよねー。ライちゃん恐るべし。

とはいえせっかくなので髪型で遊んでやろうかしらね。

こう、ものすごくド直球に言われちゃうと・・・むぅ。

もちくらいやいたっていいじゃんさー。海苔で巻いて食べてやるもんね。

 

 ライちゃんの髪をぐるぐるしながらもふもふ。らいちゃんも結構なくせっけよねー。

あたしの場合寝起きに櫛が通らないとかざらだもんなー。

そういう意味ではなぜかさらさらなライちゃんの髪はうらやましいのよね。

むう。さらさらな上にそのボリュームをキープとはまさに人魚の神秘っさー。

 

 

「あ」

 

「うにゅ?」

 

「クリームか…」

 

「生クリームたりないの?」

 

「足りないっつーか無い。そうそう使わねえしなぁ。」

 

 にゃんですとー。聞いてしまった・・・私は聞いてしまったさアスカ。

聞いたからにはお求めしないとね。

 

「にゃんでさー!走れアスカ!私の舌は甘みを求めている!」

 

「くりーむなのです、あまあまですよー。」

 

 経過を聞く限りあたしの提案は採用されたようで。

アスカとてなちゃんはクリームを買いに行きましたとさー。

そういえば、なんでもクエストカウンターにも長い間いってないなぁ。

こんどクッキーでも買ってあそびにでもいこーかな。

久々にデスねーさんとお話もしたいしねー。

 

「とりあえずおしゃべりでもしてまってましょーかねー。」

 

「あいあい。とりあえず私の髪の毛が変なほうに進化を遂げてしまったんだぜ?」

 

「えー、いいじゃんさポニーテール。かわいいよポニーテール。」

 

「なんだか竜宮の使いにでもなった気分なんだぜ?」

 

「天変地異おこるっさー、解除!」

 

 髪留めのリボンすぱーん。

これでくせっけっぽくならないのがもううらやましい。うぐぬぬぬ。

 

 

「ところでりーたんりーたん?」

 

 髪をふきあげながら唐突にライちゃんが質問してくる。

いつも一緒にお風呂入ったりはしてるから別段気になる事はないんだけど。

なんとなく、いつもと雰囲気が違う気がした。

 

「頭のひれをホットケーキに入れれば魚介ミックスってやつになりませんかね?」

 

「ならないっさ!?むしろそれお好みやきっさ!」

 

 ・・・気がしただけだった。

と思わせといてさ、ゆっくり這いよるライちゃんってほんとにね。

こう・・・じゃれられてる感じがするっさー、毎回。

髪を乾かし終えて、脱衣所を出て座ったときだった。

 

「りーたん、やっぱりますたーは大好きです?」

 

「ひに”ゃ”つ!?・・・っほ・・・ゲホッ」

 

 唐突過ぎてお水でむせた。おのれ人魚め、これぞ水魔法ってか!(違う

というかいきなりすぎて頭がまだ追いついてな・・・・おいついたよくやった。

 

「な、なな、唐突になに言いだすっさライちゃん!?」

 

「?特に深い意味はないのですよー。ますたーとりーたん仲いいですし。」

 

 で、どうなんです?と覗き込んでくる。ううむ、逃げ場がない。

まさかこうなることを見越してあててんのよ的アタックから仕組んでいたとか?

いやいやいや、まっさかねー。まっさかさーま。

 

「いや、まぁそりゃあさ・・・すき・・・・だけど・・・・さぁあ!?」

 

「おやおや、りーたんがまるでゆでだこなのですよ。もうひとっぷろ行っとくんだぜ?」

 

「いや、だからそうじゃなくってさ!?」

 

 うぅ、恥ずかしいどころの話じゃないよこれ。だめだーうー。

 

「気を取り直して!焼くさ!ホットケーキ!焼いてやるっさ!」

 

「ふふふ、逃がさないのだぜりーたん。」

 

 らいちゃんもエプロンして水産。いや推参。うむ可愛い。

というかほんとに逃げ場がない、うぐぬぬぬー・・・

とりあえず気を紛らわすためにボウルの中身をぐーるぐるー。

 

「別に今更なのですよー?リーたんがますたー好きなのなんて周知の事実ですし。」

 

「う・・・にゃあ~・・・どうしてそうくらいつくっさー」

 

「ふふ、気になったりするのですよー。ますたーのことはもちろん、りーたんやティナたんも気になるのですよー?」

 

「むぅ~。アスカかぁ・・・もう結構長い付き合いになるのよねー・・・」

 

「む、馴れ初めですか、染めちゃいますか、私色です?」

 

 うむ、話の腰を全力でブレイクしに来ないでおくれライちゃん!

結構勇気がいるものよ?こういう話ってさー。

 

「うーなー・・・まぁライちゃんだしなぁ・・・ゆっくりだけどいい?」

 

「うぇるかむなのですよー。ゆっくりじっくりご堪能ですよー。」

 

 

 もう八年も前だ。あの日、私の世界にとてつもない色と光をあいつが持ってきたのは。

第一印象は「兄弟の怖いほう」だったっけ。いつもぶすっとした顔してさ。

目に見えるものは全部貫くような目をしてた。

後覚えてるのは古ぼけたハチマキを大事にしてたことぐらい・・・かなぁ。

 ずいぶんと気になってしょっちゅう後ろをついてってたっけ。

歳はあたしのほうが上だったけれど、特に同年代で中のいい人もいなかったし。

ゆらゆら動くしっぽがちょっとかわいーなーとか、ドミニオンの世界ってどんなだろう、って。

最初は好奇心だった。ちょっとずつ、ちょっとずつ。

いろんな話をして、いろんな話を聞いた。

外をあまり知らなかった私にしてみれば、すべてが冒険譚だった。

 

一年ぐらいたったころだろうか。リョウガさん・・・アスカのお兄さんがいなくなる少し前。

いいもの見せてやるっていわれて、外に引っ張り出された。

きれいな夕焼けはまだ覚えてる。でも、ちょっと許せないことがあったり。

本気で頭たたいたっけなあ。うん、懐かしい。

 

「はー・・・リーたんがますたーたたくのは昔からだったんですねー・・・」

 

「ちょっと待つさ。それすごい誤解を産むからやめてほしいんだけど!?

 まぁ、無鉄砲だったしねー、あいつ。無駄に突っ込むしさぁ・・・。

 いまでこそライちゃんもいるし、あいつも場数を踏んでるけどねー・・・。

 結構危ないこともあったんさー。」

 

「ますたーの突撃癖もそのころからですかー・・・なんだかあいかわらずなんだぜ?」

 

「だってさー、だってよー?怪我して誇らしげに帰ってくるんさー?まったくさー。

 まぁ・・・そういう職業だってのも知ってるけど・・・。」

 

 スカウト、アサシン。あいつがこの世界でついた仕事はそれだった。

兄貴を探すためには都合がいいんだ、って笑ってたけど、時々ものすごく怖くなる。

遠く消えてしまいそうな感覚になったりだってする。

 

「りーたん?」

 

「正直ね、好きだよ。あいつのこと。でもね、たまにすごく怖くなる。

 そういう世界で生きてることも・・・

 分かってはいるけどさ。ライちゃんは・・・きっと見たことがないと思うけど。

 たまにすごく怖い顔するんさ。

 はじめてあった時みたいな、怖い顔するんさ。」

 

 全てを物として見るような。鋭くて、でも触ると壊れてしまいそうな。

今でもたまにそんな顔をするのだ。そしてきっと、あいつは――――。

 

「優しいからさ。向いてないんだよ、本当は。おせっかい焼きだし。

 助けられるものならきっと全部助けようとする。

 でも・・・それが出来ないことも、知ってるから。」

 

 だからこそ。いつか消えてしまうんじゃないかと。壊れてしまうのではないのかと。

 

「不安には・・・なるっさー。」

 

「・・・ますたーも大概なのです。リーたんを不安にさせるままなんて、色々駄目駄目なのだぜ。」

 

「まったくさー。っとと、ライちゃん、フライパンフライパン!」

 

 ちょろっと長話をしてるうちにフライパンが焼くものよこせとばかりに音を立てていた。

熱しすぎじゃないかなあこれ。とりあえず生地投入に移るのよ!

 

「大分話し込んじゃったなぁー。やけるかしらこれ。」

 

「いけるとおもいますよー?・・・リーたん、ますたーはまだすごく怖いです?」

 

「あはは、まっさかー。いなくなっちゃうかも、って思うことはあるけどさー。きっと、大丈夫っさ。」

 

「おおぅ、自信満々なのだぜ。もう、大丈夫です?」

 

「大丈夫も何も元から凹んだりしてないっさー。それに」

 

「?」

 

 そう、そうだ。今はもう、大丈夫。そりゃあアタシが不安になる事はそりゃあるけれど。

 

「みんないるっさ。ライちゃんも、てなちゃんも。クルハ達だって。何よりあたしがさせないさー。」

 

 ゆっくりと生地を投入する。いつも作るあいつは見てきたし。

見よう見まねでも何とかなるでしょー。

じゅわぁ、といい焼き音とともに、ライちゃんが何かつぶやいた気もしたけど・・・・気のせいかなぁ。

とりあえずは・・・ダークマターは生み出さないようにしないとね。

 

「さて、めざせふっくらなんだぜりーたん。支援はお手の物ですよー?」

 

「いやいや、ライちゃん普通に手伝ってよ!?それただ歌ってるだけだから!」

 

「リーたんがんばるのですよーぅ、人魚は火には弱いんだぜ。」

 

「何でエプロン着たんさ!?」

 

 ドタバタしてるこの感じが、なんだかんだでたまらなく好きなのだ。

お日様の色をくれたあいつの周りは、やっぱりこうじゃなくっちゃね。

騒いで騒いで、楽しい場所でなくっちゃね。

まずは一枚。こげたって多少は許してくれるでしょーさ。

 

「お日様一枚、あがりっさー!」

 

 

 

 

 

陽だまりのホットケーキ(後) 了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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